「梅丘QUINTET」- 梅ヶ丘 -
今回のAPPLE TREEは、APPLEBUMの事務所から徒歩圏内にある「quintet(クインテット)」さん。
以前にインタビューさせていただいた「ripple」のRyoさんとも縁の深い、小田急線梅ヶ丘駅から徒歩2分のところにあるカルチャースポット。
店主の浜中聡さんこと、通称“ハマさん”にお話を伺いました。
初めて訪れてもどこか落ち着けて、気づけば長居してしまう。
そんなquintetの空気感は、ハマさんがこれまで触れてきた音楽やカルチャー、人との出会い、そして“場をつくること”への想いから生まれていました。
【店名の由来】
「quintet」は“五重奏”という意味で、
・音楽(レコード)
・コーヒー
・お酒
・サッカー
・仲間
そういう複数の要素を持った店にしたくて、この名前を付けました。
「最初から“何か一つだけ”に絞るつもりはなかったんです。
レコードもあって、コーヒーも飲めて、お酒も楽しめて、サッカーの話もできて、仲間が集まってくる。
そういういくつもの要素が、それぞれ独立しているようで、ちゃんとひとつの空気になっている場所をやりたかったんです。」
【クラブカルチャーの最前線へ】
大学時代に先輩に連れられて触れた東京のクラブカルチャーに惹かれ、街の求人誌をきっかけに渋谷の老舗クラブであり、ブラックミュージックの聖地「HARLEM」で働き始めました。
「HARLEMのトイレ掃除、めちゃくちゃ厳しかったんですよ(笑)。
便器は舐められるくらいに奥までちゃんと綺麗にっていう教えで。
素手を突っ込んで、“ん、まだジャリジャリしてるな?”みたいな(笑)。」
「あと、店内外に貼るイベントのポスター貼りも実は簡単じゃないんですよね。」
トイレ掃除やポスター貼り、現場の空気づくり。
華やかに見えるクラブの裏側で積み重ねてきた経験が、今のquintetにつながっているのだと感じました。

【quintetの始まり、なぜ梅ヶ丘だったのでしょう?】
「世田谷でやりたかったんです。
友達もこの辺に住んでいたし、都心からも遠すぎないアクセスの良さ、何より街の雰囲気がいいなと思って。」
物件を見に来た時、当時建物の1階にあった魚屋さんに話しかけ、その方の人柄もすごく良かったことが決め手だったそうです。
もともとはカラオケ店だった空間を、自分たちでリフォームし、少しずつ今のお店の形にしていったとのこと。
「お店は今でもまだ未完成だと思ってるんですよ(笑)。
最初は本当に何もなかったんですけど、ソファもレコード棚も、いろんな人が持ち込んでくれて。
気づいたら少しずつ今の形になっていった感じですね。」
お店をゼロから完璧に作り込むというより、人が関わることで育っていく。
その“未完成”という言葉が、quintetの懐深さと居心地の良さにつながっているのかもしれません。

【お店をやるうえで、一番大事にしていることは?】
ハマさんが何度も口にしていたのが、「コミュニティ」と「ムード」という言葉でした。
「やっぱりコミュニティが大事なんですよね。
みんながそこで幸せに暮らしていけることが目的というか、その中で消費したり、助け合ったり、何かを作ったりする。
そういう流れが自然に生まれる場所にしたいんです。」
「あとは、ムードみたいなものをすごく大事にしてますね。」
誰かがちょっと寂しくて来る。
なんとなく居心地がよくて、つい長居してしまう。
そういった“感覚的な価値”こそ、お店のいちばん大事な部分だと話してくれました。
そして、その心地良いムードをそっと支えているのが、音楽の存在なのだと。
【コーヒーに対しての考え方】
「もちろんコーヒーは好きなんですけど、東京には美味しいコーヒーって本当にたくさんあるじゃないですか。
だから僕は、“特別な一杯”というより、いつもあるデイリーなコーヒーを目指したいんです。」
派手な希少性より、日常にあること。
ふと思い出して、また飲みに来たくなること。
quintetのコーヒーには、そういうお店の在り方そのものが表れているように感じます。

【“循環”というキーワード】
最近は、コーヒーかすを活用した循環のプロジェクトにも関わっているそうです。
コーヒーかすをカブトムシの幼虫が食べ、分解し、その糞が栄養価の高い肥料になり、そこから野菜や果物を育てる。
そんな仕組みにも、ハマさんは強く惹かれていました。
「やっぱり循環って面白いんですよ。
レコードもそうだと思ってて、滞るよりちゃんと回っている方がいい。」
ただコレクションするだけではなく、聴くこと、共有すること、受け継ぐこと。
その考え方は、今のお店にもそのまま通じています。
「文化的にレコードも循環しないと意味がないと思うんです。
一人で持ってるだけで掛けもしないのは、何がレコードの価値なんだろうって。
コレクター精神も分かるけど、海外に5、6万円で売っちゃって、二度と会えなくなるのは寂しいですよね。
顔の見える相手と共有したり受け継いだりすることも、すごく大事だと思うんですよね。」
その“循環”への感覚に共鳴する人が集まり、自然と信頼関係が積み重なっていく。
その結果として、名だたるDJたちがこのお店に出入りしていることにも、深く頷ける気がしました。


※写真はDJ KENSEIさんが現場で使い込んだレコード、特別な雰囲気を感じました。
【影響を受けたカルチャー】
根底にあるのは、ヒップホップを入り口に広がっていった音楽体験。
最初はラップのレコードを買い始め、そこからサンプリングネタを掘る楽しさにハマり、さらにジャズへ、レコードカルチャーへと深く入っていったそうです。
「ヒップホップから元ネタを辿って、ジャズが好きになって。
その流れでジャズ喫茶みたいな店にも憧れるようになっていったんです。」

【記憶に残るパーティー】
HARLEM時代から数えきれないほどの現場を見てきたハマさん。
その中でも特に印象深かったのは、日本のヒップホップパーティー「DISC-O-TECH」と「Honey Drippin’」の存在だそうです。
「めちゃくちゃかっこよかったですね。
音楽だけじゃなくて、空気も、人も、全部含めて“パーティー”って感じがして。
ああいうのはすごく影響受けました。」
今のquintetで行うイベントも、そうした原体験がしっかり息づいています。
ただし、今のスタイルは、いわゆるクラブの夜遊びとは少し違っています。
「今は昼から集まれるパーティーもいいんですよね。
子ども連れでも来られるし、家族も一緒に楽しめる。
そうやって、年齢も立場も混ざって同じ場所にいられる方が、今はしっくりきてます。」
90’s〜00’sのムードを通過してきた感覚が、日中の店内にも自然と滲み出ている。
コーヒーを飲む人、音楽を楽しむ人、家族連れ。
老若男女さまざまな人が同じ空間を共有している、quintetらしい“パーティー”の形。
歳を重ね、ライフスタイルの変化があっても、柔軟にアップデートしてきたquintetにしか生み出せない空気があります。
【スポーツにしかない熱気】
サッカーも、quintetを語るうえで欠かせない要素です。
高校時代に全国大会出場するほど打ち込んできたサッカーは、今でもハマさんの人生の大切な軸のひとつ。
ワールドカップやチャンピオンズリーグをみんなで観る時間や、スポーツが生む独特の熱狂は、音楽とはまた違うエネルギーを持っているといいます。
「スポーツにしか作れない熱気ってあるんですよ。
あれはやっぱりすごいなと思います。」
※お店に置いてあるこの雑誌に、若かりし頃のハマさんも掲載されていました。
【これから、どんな場所にしていきたいですか?】
「誰かのためになってる場所でありたいですね。
サポーターみたいに、助けてくれる人がいて、応援してくれる人がいて。
そういう場所を作るのが、自分の使命なのかもしれないです。
やっぱり人が好きだし、仲間はすごく大事だから。」
完成を目指すというより、柔軟に変化し続ける。
ハマさんとお店の懐の大きさに魅了され、気づけば長居してしまう人が自然と集まってくる。
インタビュー当日は、HARLEM時代の同僚である三笠さんもふらっとお店に訪れ、会話はさらに盛り上がりました。
梅ヶ丘の街に根を張りながら、音楽も、コーヒーも、サッカーも、お酒も、仲間も、自然に混ざり合っていくquintet。
そんな素敵なquintetですが、
実は広島県大竹市にも「大竹quintet」という系列店があります。
こちらも「梅丘quintet」同様に、BLACKカルチャー好きが集まるホットスポット。
「quintet」を気になった方は、ぜひ一度足を運んでみてください。
きっとその日の気分に、ちょうどよく寄り添ってくれるはずです。
===========================
梅丘quintet(クインテット)
〒154-0022
京都世田谷区梅丘1-15-9 SPACE88 地下1階
アクセス:梅ヶ丘駅から徒歩2分
営業時間 : 11:00~23:00 不定休
(最新情報はInstagramをご確認ください)
Instagram:https://www.instagram.com/quintet.2013/
===========================
