アーティスト濱口健の描く “浮世絵”という新境地
NBA史に名を刻むリバウンド王 “WORM”を、江戸時代の大衆芸術「浮世絵」の構図に融合させたグラフィック "WORM" 浮世絵。
このアートワークを手がけたのは、
APPLEBUMでも数多くの名作を生み出してきた画家・濱口 健(Ken Hamaguchi)さんです。
今回は濱口さんにインタビューを行い、制作の裏側や、作品に込めた意図についてお話を伺いました。
濱口さんの穏やかな語りの中に、職人としての誠実さと確かな情熱を感じました。
是非お楽しみください。

[濱口 健 プロフィール]
1972年長崎県生まれ、画家・アーティスト。
多摩美術大学日本画専攻を卒業後、イラストレーションを経て2008年に美術作家としてデビュー。
ポップカルチャーやサブカルチャーを題材にしつつ、卓越した写実力とエッジの効いたユーモアを掛け合わせた独自の世界観で高い評価を受けています。
Instagram : @hamaguchi_painter_jp
普段使わない"筋肉"を使う感覚
── まずは、今回の作品 "WORM"浮世絵 に取り組む際に意識されたことを教えてください。
濱口 健(以下、濱):普段は写実的な作品を描くことが多いので、浮世絵風に頭を切り替えるのが大変でした。
強く意識しないと、つい対象を写実的に見てしまう。
“普段使わない筋肉”を使って描いている感覚でした。
── “普段使わない筋肉”、面白い表現ですね。
濱:浮世絵って、独特のデフォルメや動きを自分で作る必要があって。
江戸時代の写楽の役者絵なんかは、「見得を切る」瞬間を誇張して描いている。
そういうのを参考にしました。
── 今回の作品の中で、特にお気に入りのポイントは?
濱:やっぱり目ですね。
これは坂口さん(APPLEBUM代表)のアイデアなんですが、「ゴール下でリバウンドを狙う瞬間」と掛け合わせ、目線を斜め上に向けて、浮世絵の構図に取り入れたところです。
「ジャンルを限定しない」職人としてのこだわり
── 濱口さんご自身の制作スタンスについても伺いたいです。
濱:どんな絵・リクエストでも対応できる構えでいたいです。
個人的には、(歌で喩えると)演歌だけじゃなく、JAZZもROCKも自在に歌える歌手のほうが偉いと思ってるんですよ。
あまり自分のスタイルを限定したくないんです。
── 技術的なこだわりについても教えてください。
濱:制作には iPad と Apple Pencil を使いました。
筋肉の動きは線一本でも表現できるんですが、
線の太さや色味の選び方は、やっぱり西洋写実とは違います。
版画らしい掠れを意識して、江戸時代の質感をデジタルで再現しました。
── なるほど、デジタルで“古さ”を再現するわけですね。
濱:そうですね。あと、肩のタトゥーには苦労しました。
解像度の高い画像がなくて、ブートTシャツの柄を参考にしました(笑)。
今回はタトゥーが少ない時期の"WORM"だったんですが、後期にはどんどん増えていくのが面白かったですね。
── 制作中、音楽は聴かれますか?
濱:はい、聴きます。最近は古いディスコやソウルのレコードを聴くことが多いですね。
作業中ずっと座りっぱなしになってしまうので、20分くらいで盤を裏返すのが、かえってちょうどいいリズムになるんです。
運動不足も防げますし(笑)。
インタビューを通して、濱口さんの「クライアントワーク」に対するプロフェッショナルな側面を垣間見ました。
依頼者側のリクエストを尊重しつつ、制作プロセスで擦り合わせ、完成させていく。
"WORM"の、あの当時の眼の周りの黒ずんだクマも、浮世絵特有の化粧表現とうまくかかっていて、キャラクター性も迫力も増していると感じました。
この浮世絵シリーズは、"ストリートアイコン"を浮世絵の“型”に落とし込むことで、それがまた“型破り”な表現になっているのだと思いました。
異端と伝統、アートとストリートが交差する一枚を、ぜひじっくりとご覧ください。







